こんにちは!アウトドア誌の編集長をやっています、ざっきーざうるすです。
キャンプ場の空気がキリッと冷え込み、焚き火の暖かさが骨身に染みる季節になりましたね。皆さんは、秋の味覚を楽しんでいますか?
実は先日、馴染みのキャンプ場のオーナーさんから「庭の柿がなりすぎて困ってるんだよ、全部持っていってくれ!」と、カゴいっぱいの柿をいただいたんです。
「ラッキー!食後のデザート確保!」と喜び勇んでその場でガブリとかじりついたんですが……次の瞬間、私の口の中は大変なことになりました。
「ははは、それは干さないと食えんぞ」と笑うオーナー。その時、ふと思ったんです。
「これ、キャンプのギアメンテナンスみたいに、手間暇かけて育てる楽しさがあるんじゃないか?」と。
というわけで今回は、田舎暮らしに憧れるキャンパーの皆さんへ送る、「自家製干し柿の作り方」をご紹介します。ベランダでもできる、最高のスローフード体験ですよ。
なぜ今、干し柿作りなのか?
「スーパーで買えばいいじゃん」と思うかもしれません。でも、私たちはキャンパーですよね?
テントを設営し、火を起こし、時間をかけて料理を作る。その「不便を楽しむプロセス」こそが最高の贅沢だと知っています。干し柿作りも全く同じです。
- 秋の風を感じながら皮をむく静かな時間
- 日々少しずつ小さく、色が濃くなっていく変化
- 完成した時の、ねっとりとした濃厚な甘みへの感動
これはもう、立派なアクティビティなんです。
「そもそも渋柿がない!」どこで手に入る?3つのルート
「庭に柿の木なんてないよ…」という方も諦めないでください。実は、渋柿は意外な場所で簡単に手に入ります。
1. 物産館・道の駅・スーパー
私たちキャンパーの味方、「道の駅」が最強です!キャンプ場に向かう途中の直売所を覗いてみてください。この時期、驚くほど安く、枝付きのまま束で売られています。近所のスーパーでも、秋には果物コーナーの端っこに並ぶことが多いですよ。
2. メルカリ(フリマアプリ)
「大量に作りたい」という場合はメルカリが便利。農家さんが規格外品を安く出品していることがあります。「渋柿 5kg」「干し柿用」などで検索してみましょう。
3. ジモティー・SNS(Threadsなど)
「庭の柿をとってくれるなら無料で差し上げます」という投稿が結構あります。地元の人と繋がれる良い機会ですが、注意点もあります。
個人間のやり取りや、知らない人の敷地に入ることになるため、プライバシーやマナーには十分配慮しましょう。「取りに行く約束をしたのに連絡が取れない」といったトラブルもゼロではありません。十分に注意し、自己責任で利用しましょう。
準備するもの:まるでキャンプの準備!
特別な道具は必要ありません。いつものキャンプギアも活躍します。
▲今回用意した道具たち。これだけで準備OK!
切れ味の良いナイフ
オピネルなどのアウトドアナイフでもOKですが、数は多いのでピーラーがあると便利です。皮むきはリズムが大事!
こだわりの紐(ひも)
一般的なビニール紐でも十分ですが、せっかくなら麻紐など雰囲気にこだわりたいところ。
ちなみに、ヘタが折れてしまったり紐がない場合は、洗濯ばさみで挟んでハンガーに吊るすのもキャンパーらしい代用テクニック(裏技)としてアリですよ!
ヘタがない時の救世主
「ヘタが折れて結べない!」そんな時はこれが最強。本来はみかん用ですが、柿を入れるのに最適。これなら初心者でも落ちる心配ゼロです。
熱湯用の鍋
カビ防止の殺菌処理に使います。大きめの鍋で一気にやるのがコツです。
干すためのハンガー
紐で吊るす場所がない時は、ピンチハンガーが最強です。風で飛ばない丈夫なものを!
鉄壁の守り!干しカゴ
「鳥に食べられたくない」「虫が心配」という方は、キャンプ用のドライネットがおすすめ。これならベランダでも安心して放置できます。
【実践】失敗しない干し柿の作り方 5ステップ
さあ、ここからは具体的な手順です。ポイントは「焦らず、優しく、天気と相談する」こと。まるで天候を読みながらサイト設営をする時のような気持ちでいきましょう。
STEP 1:ヘタを残して皮をむく
柿のヘタ(上のT字の部分)は、紐を結ぶための重要なアンカーです。ここを切り落とさないように注意して、皮をきれいにむいていきます。ヘタ周りの皮も少し残しておくと、仕上がりがプロっぽくなりますよ。
STEP 2:紐で結んでペアにする
紐の両端に柿のヘタを結びつけ、2個で1組のペアを作ります。こうすると、物干し竿などに振り分けて干しやすくなります。長さは50cm〜60cmくらいが扱いやすいです。
▲ヘタを残して皮をむき、紐で結んだ状態。今回は数が少ないので、1つずつ被らなければOKです。
STEP 3:熱湯ダイブ(殺菌)
ここが最重要ポイント!沸騰したお湯に、柿を5秒〜10秒ほどくぐらせます。これで表面が殺菌され、カビが生えにくくなります。
STEP 4:風通しの良い場所に干す
ベランダの物干し竿や、軒下に吊るします。理想は「雨が当たらず、日当たりと風通しが良い場所」。
柿同士がくっつかないように、ソーシャルディスタンスを保ってあげてください。くっつくとそこから傷んでしまいます。
▲風通しの良い場所に吊るします。この光景、秋らしくて良いですよね。
STEP 5:美味しくなる魔法「揉み込み」
干し始めて1週間ほど経ち、表面が少し乾いて膜が張ってきたら、指で優しく揉んであげます。中の渋を散らし、甘みを均一にするためです。
「美味しくな〜れ」と念じながら、数日おきに揉んであげましょう。2〜3週間ほどで、美しい飴色の干し柿の完成です!
▲干して5日目くらいの様子。水分が抜けて少し縮んできました。
ちょっとブレイク:あんぽ柿と干し柿の違いって?
よく聞かれるのが「あんぽ柿」との違いです。
- 干し柿(枯露柿):水分が25〜30%になるまでしっかり干したもの。周りに白い粉(糖分)が吹き、食感は羊羹のようにしっかりしています。
- あんぽ柿:水分を50%ほど残して仕上げたもの。中はとろりと半熟でジューシー。実は、硫黄で燻製してから干すという特殊な製法で作られることが多いんです。
家庭で作るなら、まずは王道の「干し柿」が失敗少なくておすすめですよ。
【キャンプ飯アレンジ】焚き火ワインに合う「柿チーズサンド」
完成した干し柿、そのままかじりつくのも最高ですが、キャンプの夜にぴったりな大人のおつまみにアレンジしてみませんか?
🥃 干し柿とクリームチーズのミルフィーユ
ウイスキーやホットワインとの相性が危険なレベルです。混ぜて乗せるだけの簡単レシピ!
- 干し柿のヘタを取り、ナイフで縦に切り込みを入れて開きます。種があれば取り除きます。
- 開いた干し柿の上に、クリームチーズをたっぷりと乗せます。
- 砕いたクルミ(ローストすると香ばしさUP!)をトッピング。
- もう一度閉じて、ラップで包み、クーラーボックスで少し冷やして形を馴染ませます。
- 1cm幅にスライスすれば、切り口が美しいオードブルの完成!
アレンジ:少しだけラム酒を垂らしたり、ブラックペッパーを散らしたりしても最高です。
知っておくと自慢できる!干し柿Q&A
作っている間に聞かれるかもしれない素朴な疑問や、知っておくと便利な豆知識をまとめました。
日本の歴史書『延喜式(えんぎしき)』(10世紀頃)に、祭礼の際のお菓子として「干柿」の記述が残っています。当時は砂糖が非常に貴重だったため、干し柿は「天然の甘味」として、とても重宝されていました。
江戸時代になると品種改良も進み、保存食やお茶請けとして庶民の間にも広く定着しました。
- 常温(涼しい場所): 2〜3日(カビが生えやすいため非推奨)
- 冷蔵庫: 約1ヶ月
- 冷凍庫: 約3ヶ月〜半年
【保存のコツ】
1つずつラップで包み、ジッパー付き保存袋に入れて空気を抜いて保存するのが一番長持ちします。冷凍してもガチガチに凍らないので、出してすぐに食べられます(シャーベットのような食感で美味しいです)。
生の柿と比べて水分が抜けている分、栄養価(100gあたり)が高くなっています。
- 食物繊維: 胃腸の働きを助け、便秘解消に役立ちます。
- β-カロテン: 体内でビタミンAに変わり、風邪予防や肌の健康維持に。
- カリウム: 余分な塩分を排出するので、むくみ予防や高血圧予防に。
- エネルギー補給: 糖質が高いため、疲労回復時のエネルギー補給に最適です。
※注意点: 栄養豊富ですが、カロリーと糖質も高いため、1日1個〜2個を目安にするのが良いでしょう。
これは「柿霜(しそう)」と呼ばれ、乾燥する過程で内側から染み出した糖分(ブドウ糖や果糖)が固まったものです。カビではありませんので、安心してお召し上がりください。むしろ、白く粉が吹いているものほど甘みが強い証拠です。
(※ただし、青や緑色のふわふわしたものが付いている場合はカビですので、食べないでください)
渋柿の渋みの正体は「水溶性タンニン」です。干すことによって、このタンニンが唾液に溶けない「不溶性」に変化します(渋抜き)。渋みが消えるわけではありませんが、舌で感じなくなるため、本来の甘さだけを強く感じるようになります。
そのまま食べるのはもちろんですが、以下のアレンジも人気です。
- クリームチーズと一緒に: 干し柿を開いてクリームチーズやバターを挟むと、ワインに合うおつまみになります。
- ヨーグルト漬け: 刻んでプレーンヨーグルトに一晩漬け込むと、プルプルの食感に戻り、自然な甘味料になります。
- 天ぷら: 衣をつけて揚げると、とろっとした甘いデザートになります。
実はおーい!と呼びかけたくなるほど、海外でも柿はメジャーなんです。ヨーロッパやアメリカではそのまま「Kaki」で通じることが多いですよ。
海外のスーパーでは主に2種類が並んでいます。
- Fuyu(フユ): 日本の富有柿。甘柿です。
- Hachiya(ハチヤ): 縦長の形をした渋柿。熟すとゼリー状になります。
干し柿を作るなら、間違いなく「Hachiya(ハチヤ)」を選んでください。アメリカなどでは日本文化として「Hoshigaki」作りが静かなブームになっているんですよ。
まとめ:季節を味わうスローライフを
柿がオレンジ色に色づく頃から、寒風にさらされて茶色く縮み、白い粉をまとうまでの時間。それはまるで、季節の移ろいそのものを味わっているような体験です。
渋くて食べられなかったものが、自然の力(太陽と風)だけで極上のスイーツに変わる。これって、すごくアウトドア的だと思いませんか?
▲これが完成品!秋の宝石のような輝きです。
もし、ご近所で柿が余っていたら、ぜひチャレンジしてみてください。今年の冬キャンプは、自家製の干し柿をポケットに忍ばせて、温かいコーヒーと一緒に頂く……そんな贅沢な時間を過ごしてみませんか?
Let’s enjoy slow outdoor life!
文・写真:キャンプ大好き編集長 ざっきーざうるす
